パジャマ人間

日常の思考や嗜好やなにかの感想など

寺地はるな『今日のハチミツ、あしたの私』

もし明日人生が終わるとしたら、きっとわたしは、喜ぶ。

そんなふうに思っていた中学生の頃の碧は、ある日、見ず知らずの女の人に瓶に入った蜂蜜をもらう。

「蜂蜜をもうひと匙足せば、たぶんあなたの明日は今日より良くなるから」

成長し三十歳になった碧は、その蜂蜜をきっかけに食を提供する仕事に就いており、恋人と同棲して二年になる。恋人の安西は仕事が続かず、些細なことで急に不機嫌になる、小学生のときにクラスに一人はいたような幼稚な性格で、碧の友人の真百合に言わせれば「わたしなら別れる」ような男である。

安西は絵を描くのだが、それが仕事になるわけではない。そんな安西が出勤した初日にクソみたいな理由で仕事を辞めて帰ってきて、実家に帰り家業を手伝うことにすると言い出した。自身も仕事を辞め、安西について行く決意をした碧だが、安西の父親は安西とはまた違ったタイプの面倒くさい人で、時代錯誤なモラハラ野郎であった。安西の父親は遠回しな言い方で、養蜂をやっている黒江進という男に山をひとつ貸しているのだが黒江が滞納しているその地代を回収してこい、と碧に言う。碧は安西と一緒にいるために、それを請け合った。

 

私は、安西が嫌いだ。父親があんなだから安西にもいろいろあったのだろうということは想像できるが、それでも幼稚で面倒くさいやつだと、最初から最後まで思っていた。しかし碧は、安西の長所も短所も客観的に理解した上で、最初から最後まで安西のことを好きだった。それでも碧に対してはイライラしなかったのは、碧が自分でやるべきことを見つけながら常に未来に向かって進んで行こうとしていたからだ。その行動力はすごいと思う。私も碧か安西かで言ったら、安西タイプの人間なので、そんな碧に憧れた。

碧は急にやってきた知らない土地で、黒江から養蜂を学び、ひょんなことから知り合ったあざみさんという女性のスナックをカフェに改造する手伝いをし、自分で自分の居場所を確立していく。

変にズレている不器用な黒江とその娘の朝花の意地の張り合いみたいだった関係も、碧を潤滑剤として徐々にほどけていく。

朝花のキャラがいい。とてもかわいい。黒江のキャラもいい。すごく変だ。

 

安西にはずっとイライラさせられっぱなしだったが、最後はほんの少しだけ見直した。

おもしろかったし、後味のよいさわやかなラストだった。

今日のハチミツ、あしたの私 (ハルキ文庫)

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