パジャマ人間

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赤川次郎『ホームタウンの事件簿』

ねえ、知ってる?

“情報通”の笠井京子は帰宅したばかりの夫に話しかける。お隣に越してきた人たち、ちょっと変なのよ。

悪意のない噂が噂を呼び、ご近所をかけめぐる――。集合住宅の隣人同士をめぐる、ささやかでちょっと怖い事件を描いた傑作短編集。

「私語を禁ず」「お節介な競売」「罪ある者の象徴」「ひとりぼっちの誕生日」「副業あります」「天からの声」「郵便物は宛先不明……」の七話を収録。

『ホームタウンの事件簿』文庫裏表紙より

笠井家は京子と夫の隆一、娘の英子と良子の四人家族。その笠井家の住む団地で起こる、七つの事件というか、トラブルの話。

どの話も、そこそこ後味が悪くて、楽しい気持ちで読むというわけにはいかないのだが楽しめた。矛盾しているようだが、私の語彙ではそう表現するしかないのだ。

「天からの声」に登場する六十歳くらいの中北夫妻だが、上の部屋の些細な音でも反応して激しくクレームを入れてくる面倒くさい住人である。住人が若い夫婦であったならなおさらに激しく文句を言う。中北さんちのせいで、中北さん宅の上の部屋の住人はノイローゼになったり引っ越したりするので、その部屋はだいたいいつも空いている。

そんな中北さんは、盆栽が趣味でベランダでいろいろ育てているのだが、その葉や土が下の階のベランダに落ち下の住人に迷惑をかけていることには気づいていない。下の住人が、中北さんとは関わり合いになりたくないので文句など言わないのだ。「面倒な人」になったもの勝ちな感じがしてなんだか嫌な話である。

そんな中北さんだが、空き部屋になったはずの部屋からの謎の騒音に悩まされ、神経がまいってしまい、引っ越すことになる。

「でも、まあ、これで平和ね」と京子は言うのだが、隆一は、そうだろうか?と考えている。中北夫妻は今度はどこへ越して行ったのだろう?

解説の図子慧先生がこう書かれている。

『ホームタウンの事件簿』、ほぼ二十年ぶりに読み返して、ホラーだったことに気が付きました。

ご近所トラブルは、最も身近なホラーである。

 

ところで。この一冊だけで、衣子さんと絹子さんと布子さんが登場する。この団地、きぬこさん過多じゃない?

赤川次郎先生は「きぬこ」という名前が好きなのかな。

ホームタウンの事件簿 (角川文庫)

ホームタウンの事件簿 (角川文庫)

 

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